日本の最南端の町、竹富町。
南の島は一年間暖かな気候と思いがちですが、
ここ連日、昼間の竹富島の気温は16~18℃ほど。
気温だけで判断すると、
温暖な南の島だな・・・。と思いがちですが、
北から吹き下ろす風の冷たさにより、
体感温度はまさに真冬を感じさせます。
暖房設備が手薄な南の島です。
昨日ご来館いただいた竹富町の姉妹都市である
斜里町の皆さまも、
「マイナス17℃の斜里より寒い!」
と一様に話されていました。
竹富東港桟橋待合所「てぇどぅんかりゆし館」
の上にはどんよりとした雲が浮かんでいます。
決して観光日和とはいえない今日の竹富島ですが、
赤瓦の屋根から雨水が滴り落ちる雨模様のゆがふ館に、
大勢の皆さまにご来館いただいています。
そのゆがふ館の鮮やかな色彩が際立つ展示パネルのなか、
異彩を放つ昔の風景が写し出されたモノクロの2枚のパネル。
どこか懐かしさを感じさせるこの2枚のパネルですが、
日本を代表する芸術家、
岡本太郎氏が撮影した
「1959(昭和34)年の竹富島の風景」です。
いずれも「1959年11月29日の竹富島」
(川崎市岡本太郎記念館蔵)
若かりし頃、フランスで民族学を学んだ岡本太郎は、
日本人のルーツに深い関心を持っていました。
こうした影響から、日本民俗学の先駆者である
柳田國男先生と親交を持ち、
さらに、三線を通じて東京に竹富島の文化をもたらした
内盛唯夫翁との交流を通じて、
最初の訪沖となった1959年11月26日~12月2日の間、
竹富島に2泊します。
岡本太郎が訪れた時、竹富島では
竹富中学校創立10周年記念祝賀会が開催されており、
写真集『岡本太郎の沖縄』(2000年 日本放送出版協会発行)
では、踊りに興じる島人の姿も写し出されています。
さらに、岡本太郎は
多くの島人の顔写真をのこしてくれました。
写真からみる気品をもつ島人の顔からは、
竹富島を支え続けてきた誇りを感じさせてくれます。
岡本太郎は、
著書『沖縄文化論』を通じて沖縄に対し、
「何もないことへの眩暈」
という最大級の賛辞を贈り、
「それは私にとって、一つの恋のようなものだった」
と述べています。
沖縄に対し深い愛情を持ち続けた
岡本太郎が竹富島にのこしてくれたこと。
それは、竹富島の人々に対し、
心にそっと留めている故人への想いを、
引き出しを開けるように取り出し、
昔を懐かしみつつ素敵な笑顔を浮かべるお年寄りや、
幼いころの自分の姿をみて
当時の情景を思い浮かべる島人に、
喜びをもたらせてくれることではないでしょうか。
ゆがふ館に展示されている
モノクロの2枚のパネル。
ここには、
竹富島の記録と記憶がいっぱい詰まっています。
(ta)